エッセイ

母の贈り物、樹木葬、ホタル、そしていのちは続く

こんにちは、心に届く手紙屋さんです。

私は、片付けが苦手である。大事なものが多すぎて、捨てられないのだ。モノには大事な人との思い出が紐づいているから、そう簡単に断捨離なんてできない。

それでも近頃、「これではいかん!」としばらくぶりで大量の「思い出箱」に手を付けた。あるわ、あるわ、ぬいぐるみや人形。フリマアプリに出品すれば、高値が付くモノもあるが、プライスレスなものも多い。

その中で、私が最も愛しいと感じるのが、今は亡き母手作りのぬいぐるみや人形たち。幼い頃から、よく作ってくれた。母もファンシーグッズが好きだったのだろう、時折、隣町にたった一軒あったファンシーショップで、男女の小さな人形がワルツを踊るオルゴール、こつんこつんと水の入ったカップにお辞儀をする鳥などがいろいろなかわいい物を見て、二人してワクワクだった日のことを思い出す。

母の作るぬいぐるみは、ハギレで作るから、売り物みたいな仕上がりではないけど、愛嬌があり、優しく温かみがある。まるで母そのものみたいだ。時を経て、さらに味わいを深めたその子たちに日光浴させて、風を通したり、防虫剤を入れては、また箱の中に収める。私がこの世を去る日が来たら、これらも捨てられるかもしれないけど、一つか二つは誰かにもっていてもらえたらいいなあ。

さて、昨日は、友達のご主人のお墓参りに連れていってもらった。昨年3月に71歳で急逝された。

お墓は市民墓地に隣接する、樹木葬の墓園。生前お会いすることはできなかったので、日ごろお世話になっている友達、せめてご挨拶だけでもと同行させてもらった。

手入れされた木立、緑の芝生に伸びやかなアプロ―チ、その間に、一定の距離感を持ってモニュメントのようにな墓石が点在する。日当たりがよく、さわやか、なんて気持ちのいい場所だろう。

近年は、こうした樹木葬がとても人気だ。我が家も、子供たちに墓守りを期待するのは無理だろうからと将来こうした樹木葬を視野に入れている。

ところが、先日、お墓の意味を改めて考える出来事があった。

それは、「沖縄の家」というNHKBSの番組である。赤瓦の屋根、白いコンクリート瓦、アメリカ式のコンクリート打ちっぱなしの四角い家、世界遺産の首里城、そんな特徴のある沖縄の住宅が紹介された。その中で、沖縄の「永遠の住み家」として紹介されたのがお墓だった。

私は沖縄が好きで、何度か訪ねているが、車窓から見る沖縄の墓の大きさ、立派さ、その迫力に圧倒されていた。沖縄では墓がまさに「永遠の家」だからこそのスケール感、なるほどと納得した。

沖縄では墓を普請する時は、墓の中に入って三線をならし、歌を歌い、家族、親戚がカチャーシャーを踊りまくり、にぎやかだ。というのも、沖縄の人にとって、この世は仮のもので、あの世こそが永遠に生き続ける場所という考え方なのである。かつては私たちも同じような考え方だったのが、今は核家族化、少子化、過疎化が進み、墓守りが頼めない状況になりつつある。

そこで、近年は墓を持たず、永代供養、あるいは樹木葬で当初個別でその先は合祀されるスタイルを選ぶケースが増えている。

しかし、お墓を継承することは、家族の系譜を次の世代へとつなげていくことでもある。そう考えると、ずっとずっと先の子孫に「家族の系譜」を祖先の想いを伝えていくため、墓を継承することの深い意義があると思えてくる。むしろ、墓の意味を軽んじていることこそが、現在の家族のつながりの希薄さ、孤独、孤立の社会を生み出しているのかもしれないとも思えてくる。

その日の夜、市主催の「ホタル観察会」に参加した。以前からホタルを見たいと思っていたのだが、タイミングよくホタルのいる場所に家族で行くのは困難だ。今回はグッドタイミングで、参加することができた。

その日はファミリーが多く、50人ほどの参加者が2台のバスに乗り込み、闇夜の中をちょっとしたミステリツアー気分だ。真っ暗なので、正確な場所は不明だが、市内のダムを建設している場所の近くだとか。

森の中の小道を入ると、川を水が流れる音がした。500mほどだろうか、少し奥まったところに、ゲンジボタルが神々しい光を点滅したり、空中を高く舞ったり、いのちのパーティーが繰り広げていた。

ホタルが光るのは、オスとメスが出会うためだという。川の中や土の中で1年ほども過ごし、成虫となり1週間ほどでいのちは尽きてしまう。残るのは、卵だが、5000個あっても生きながらえるのは2個ほどという。そんな厳しい世界で、黙々といのちのリレーが繰り広げられているのだ。

蒸し暑さの中に、時折、涼やかな風が吹いてくる。

昼間、樹木葬の墓園に出かけたせいだろうか、闇の中でモールス信号のように点滅するホタルに、

今は亡き大切な人たちの姿が重なった。

短いからこそ、一瞬のきらめきを放つ。観る者を感動させる、ホタルの仕事は尊い。

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一筆れいのプロフィール

心に届く手紙屋さん
新聞社、企画会社等を経て、フリーランスのコピーライターとして25年のキャリアがあります。
紙媒体、テレビ、webとフィールドは広く、行政から企業、団体、個人まで、あらゆるジャンルの広告、広報に現在も携わっています。
中でもインタビューを得意とし、年間100件以上のインタビューを行っています。
コピーライティング、インタビュー、編集、ネーミング、プランニング、印刷物のプロデュース、イベントの立案、
コピーライティング講座講師、コーディネーター、編集者、校閲、校正など幅広い業務で実績があります。宮城県仙台市を中心に活動中。
趣味/読書、映画、アート、音楽、旅、ドライブ、カフェ巡り、散歩
みずがめ座2月14日生まれ、血液型O型。
メールアドレス:kokoronitodoku@tegamiyasan.net 

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